海底都市

海野十三

日本におけるSFの始祖となった小説家。本名は佐野昌一。徳島市の医家に生まれ、早稲田大学理工科で電気工学を専攻。逓信省電気試験所に勤務するかたわら、1928(昭和3)年、「新青年」に『電気風呂の怪死事件』と名付けた探偵小説を発表して小説家としてデビュー。以降、探偵小説、科学小説、加えて少年小説にも数多くの作品を残した。太平洋戦争中、軍事科学小説を量産し、海軍報道班員として従軍した海野は、敗戦に大きな衝撃を受ける。敗戦翌年の1946(昭和21)年2月、盟友小栗虫太郎の死が追い打ちをかけ、海野は戦後を失意の内に過ごす。筆名の読みは、「うんのじゅうざ」、「うんのじゅうぞう」の二通りが流布している。丘丘十郎(おか・きゅうじゅうろう)名でも作品を残し、本名では電気関係の解説書を執筆している。

   

妙な手紙  

僕は、まるで催眠術(さいみんじゅつ)にかかりでもしたような状態で、廃墟(はいきょ)の丘をのぼっていった。  
あたりはすっかり黄昏(たそが)れて広重(ひろしげ)の版画の紺青(こんじょう)にも似た空に、星が一つ出ていた。  
丘の上にのぼり切ると、僕はぶるぶると身ぶるいした。なんとまあよく焼け、よく崩れてしまったことだろう。巨大なる墓場だ。犬ころ一匹通っていない。向うには、焼けのこった防火壁(ぼうかへき)が、今にもぶったおれそうなかっこうで立っている。こっちには大木が、黒焦(こ)げになった幹をくねらせて失心状態をつづけている。僕の立っている足もとには、崩れた瓦(かわら)が海のように広がっていて、以前ここには何か大きな建物があったことを物語っている。  
悪寒(おかん)が再び僕の背中を走りすぎた。  
僕はポケットに手を入れると、紙をひっぱりだした。それは四つ折にした封筒だった。その封筒をのばして、端(はし)をひらいた。そして中から用箋(ようせん)をつまみ出して広げた。  
その用箋の上には次のような文字がしたためてあった。